ガラスを一枚隔てた向こうは夜の闇。
灯りに照らされた雪が白く、紅く輝いている。
そこはやさしさに満ち溢れていた。
電車とバスを乗り継ぐこと3時間。
雪に覆われた山奥で秘湯に出会った。
しんしんと静けさの"音"がする。
人のいなくなった広場。
静けさと寒さが身を包む。
お店からもれる灯りにぼんやり照らし出されたベンチ。
一番遠くのベンチに座り、ゆっくりと記憶をたぐり寄せる。
時間はたっぷりある。
クリスマスを間近に控えた日曜夜の銀座。
人の波から逃れるように裏道を進んでいくとそれはあった。
5年前に新しいスタートを切った場所。
始まったばかりの東京の生活。
見えてこない目標。
全てが白紙だったあの頃の記憶がここにあった。
[ R E T U R N ]